値の入れ子と多次元代入(Tc600-3以降)¶
Tc600-3 以降では、配列の要素、ハッシュの値、ハッシュのキーに、配列やハッシュを入れられる(入れ子)。入れ子の内側は [ ] を続けて書いて読み書きする。要素の要素へ直接代入することを多次元代入と呼ぶ。
500 系では配列の要素はスカラーだけで、a[x][y] = v は読み込み時にエラー E0029 だった。500 系からの変更点は 600 での変更点 を参照。
ハッシュそのものについては ハッシュ を参照。
入れ子の作り方¶
ハッシュの値に入れる¶
ハッシュの要素に代入すれば、配列もハッシュもそのまま値になる。
_h = IHASH()
_h["list"] = (1, 2, 3) // 値に配列
_h["sub"] = IHASH("x", 1) // 値にハッシュ
IHASH の引数に配列を書くと、ほかの関数と同じく展開される。IHASH("list", (1, 2, 3)) は IHASH("list", 1, 2, 3) と同じになり、値に配列は入らない。配列を値にしたいときは、上のようにあとから代入する。ハッシュは展開されないので、IHASH("sub", IHASH("x", 1)) のように書ける。
配列の要素にハッシュを入れる¶
ハッシュは , 演算子でも要素への代入でも展開されず、1つの要素になる。
_h = IHASH("x", 1)
_a = (0, _h, 2) // 要素数 3。_a[1] はハッシュ
_a[2] = _h // 同上
_a ,= _h // 末尾に追加
配列の要素に配列を入れる¶
配列の中に配列を入れる構文は無い。, 演算子、,=、要素への代入(_a[1] = (8, 9))のどれも、右辺の配列を展開して差し込む(500 系と同じ)。
_a = (1, 2)
_a[1] = (8, 9) // 1,8,9 (要素数 3)
_a[1] = IARRAY() // 1,9 (空の配列を差し込むと要素が消える)
配列の中に配列を持つ値は、次のような関数が返す。
- HASH_VALUES: 値が配列のハッシュを渡すと、その配列を1つの要素として含む配列を返す
- PARSEJSON / PARSEYAML / PARSETOML / PARSEXML と、ファイルから読む FREADJSON などの関数
- RESTOREVAR: 入れ子のまま保存した変数を復元する
_v = PARSEJSON('[[1,2,3],[4]]') // 要素数 2。_v[0] は配列 (1,2,3)
こうして得た配列の中の配列も、多次元代入で書き換えられる(Tc602-7以降。途中の値ごとの動作)。
段階的に組み立てる¶
内側のハッシュは自動では作られない。途中のハッシュは IHASH で作ってから、その中へ代入する。
_m = IHASH()
_m["a"] = IHASH()
_m["a"]["b"] = 1
_m["a"]["list"] = IARRAY()
_m["a"]["list"] ,= "p"
_m["a"]["list"] ,= "q"
DUMPJSON(_m) // {"a":{"b":1,"list":["p","q"]}}
途中のハッシュを作らずに _m["c"]["d"] = 1 と書くと、_m["c"] はハッシュではなく文字列 "1" になる(途中の値ごとの動作)。
読み出し¶
[ ] を続けて書くと、1つ目の [ ] の結果に2つ目の [ ] を、その結果に3つ目を……と順に適用する。
_h = IHASH()
_h["list"] = (1, 2, 3)
_h["sub"] = IHASH("x", 1)
_a = (0, _h, 2)
_h["sub"]["x"] // 1
_h["list"][1] // 2
_a[1]["sub"]["x"] // 1
_a[1]["list"] // (1,2,3) そのものが返る
それぞれの [ ] は、その時点の値の型に応じて次のように動く。どの段でも、該当する要素が無いときは空文字列になり、そこから先の [ ] も空文字列になる(エラーにはならない)。
| 値 | [x] の結果 |
|---|---|
| 配列 | x 番目の要素。要素が配列やハッシュならそのまま返る |
| ハッシュ | キー x の値(キーの一致) |
| 文字列 | 簡易配列として x 番目の要素 |
| 数値 | x が 0 ならその値、それ以外は空文字列 |
範囲指定も使える。配列の範囲指定 [a, b] の結果は、入れ子の要素をそのまま含む配列になる。ハッシュの範囲指定は空文字列になる。
_v = PARSEJSON('[[1,2],[3,4],[5,6]]')
_v[0, 1] // 要素数 2 の配列。どちらの要素も配列のまま
簡易配列のデリミタ¶
SETDELIM で変数に設定したデリミタは、その変数に直接付けた1段目の [ ] にだけ効く。入れ子の中の文字列を簡易配列として読むときは、2段目以降の [ ] でデリミタを指定する。
_s = "a|b"
SETDELIM(_s, "|")
_t = (_s, "c")
_t[0][1] // "" (2段目は "," で区切られる)
_t[0][1, "|"] // "b"
文字列への埋め込み¶
文字列の中でも [ ] を続けて書ける。
"値は %_h['sub']['x'] です" // 値は 1 です
"値は %(_h['list'][1]) です" // 値は 2 です
入れ子の配列やハッシュそのものを埋め込むと、文字列化した結果になる。
関数の引数と , 演算子¶
関数の引数や , 演算子で展開されるのはいちばん外側の配列だけで、その要素にある配列やハッシュは展開されずに1つの要素のまま残る。ハッシュはいちばん外側でも展開されない。
_v = PARSEJSON('[[1,2,3],[4]]')
func(_v) // _argc は 2。_argv[0] は配列 (1,2,3)
func(_v[0]) // _argc は 3。_argv は 1,2,3
func(_v, 9) // _argc は 3。_argv[0] は配列 (1,2,3)
_c = (_v, 9) // 要素数 3。_c[0] は配列 (1,2,3)
ARRAYSIZE(_v) // 2
ARRAYSIZE(_v[0]) // 3
関数に入れ子の配列を渡すと、いちばん外側の配列は _argv そのものになる。受け取った側で「引数が1つの配列」と「引数が複数」を区別する手段は無いので、入れ子の配列を関数に渡すときは、ハッシュに包むか、配列の要素を1つずつ渡すとよい。
GETTYPE に要素が1つだけの配列を渡すと、配列ではなくその要素の型を返す(500 系と同じ)。上の例では GETTYPE(_v[1]) は 4 ではなく 1 になる。
foreach¶
入れ子の配列やハッシュも foreach で回せる。ループ変数には要素がそのまま入るので、要素が配列やハッシュなら、さらに foreach で回したり [ ] で読んだりできる。
_h = PARSEJSON('{"a":{"x":1,"y":2},"b":{"x":3}}')
foreach _h ; _k, _sub {
foreach _sub ; _k2, _v {
// _k/_k2 = _v の順に a/x=1, a/y=2, b/x=3
}
}
foreach _h["a"] ; _k, _v { ... } // 内側だけを回す
2変数の foreach は ハッシュ と フロー制御 を参照。
値のコピー¶
代入や引数渡しは値のコピーになる。入れ子の内側も含めて、コピー元とコピー先は互いに影響しない。
_h = IHASH("a", 1)
_h["self"] = _h
_h["self"]["a"] = 2
_h["a"] // 1 のまま
内側を取り出して書き換えても、元の値は変わらない。元の値を変えたいときは、書き換えたものを代入し直すか、多次元代入を使う。
_sub = _h["self"]
_sub["a"] = 3 // _h["self"]["a"] は 2 のまま
_h["self"] = _sub // これで _h["self"]["a"] が 3 になる
比較¶
配列同士、ハッシュ同士の == は中身まで比べる。入れ子の内側も同じ規則で再帰的に比べる。
- 配列同士: 要素数が同じで、各要素が順に等しければ真
- ハッシュ同士: 要素数、キー、値がすべて一致すれば真(値としての振る舞い)
PARSEJSON('{"a":[1,2]}') == PARSEJSON('{"a":[1,2]}') // 1
ASEARCH で要素がハッシュの配列を探すときも同じ規則で比べる。ただし、探す値に配列を渡すと引数として展開されるので、配列そのものを探すことはできない。
ASORT は、要素の配列やハッシュを文字列にして(int / double では 0 として)並べる(要素が配列やハッシュのとき)。
多次元代入¶
要素の要素へ直接代入できる。= のほか += ,= などすべての代入演算子で使える。
_h["sub"]["x"] = 5
_h["list"][0] += 10
_h["list"] ,= 4 // 内側の配列の末尾に追加
_a[1]["sub"]["y"] = "new"
右辺の値は、1次元の代入と同じく最後の [ ] の位置に入る。そのため右辺が配列なら展開して差し込まれる。内側の配列を丸ごと置き換えるときは、1つ手前の段に代入する。
_h["list"] = (1, 2, 3)
_h["list"][0] = (7, 8) // _h["list"] は 7,8,2,3
_h["list"] = (7, 8) // _h["list"] を (7,8) に置き換える
範囲指定の代入(_h["list"][0, 1] = "R")も1次元と同じように使える。
途中の値ごとの動作¶
多次元代入は、最後の段から根元の変数に向かって、それぞれの段の値を書き換えては1つ手前の段へ入れ直す。それぞれの段の値の型によって、次のように動く。
| 途中の値 | 動作 |
|---|---|
| ハッシュ | キーの値を追加・上書きする |
| 配列 | 要素を書き換える。範囲外なら、足りない分を VOID で埋めて末尾に追加する |
| 文字列 | 簡易配列として書き換える |
| 数値 | 配列に変えてから書き換える。0 番目は VOID になり、元の数値は失われる |
| 無い(範囲外・キーが無い) | 空文字列を簡易配列として書き換える |
_a = ("p,q", 1)
_a[0][1] = "Q" // _a[0] は "p,Q"
_h = IHASH("l", (1, 2))
_h["l"][4] = 9 // _h["l"] は 1,2,VOID,VOID,9
_n = (1, 2.5)
_n[1][2] = 9 // _n[1] は配列 (VOID,VOID,9)
_e = IHASH()
_e["n"]["x"] = 5 // _e["n"] は文字列 "5" (ハッシュは作られない)
_e["m"][2] = 5 // _e["m"] は文字列 ",,5"
_e["n"]["x"] = 5 で _e["n"] が "5" になるのは、キー "x" を簡易配列の序数として読むと 0 番目になるため。
書き換えた値を1つ手前の段へ入れ直すときは、その値が配列でも展開せず、1つの要素として置き換える。右辺の配列が展開されるのは最後の段だけなので、配列の中の配列も入れ子のまま書き換えられる。
_v = PARSEJSON('[[1,2],[3,4]]')
_v[0][0] = "A" // _v は ("A",2),(3,4)
_v[1][0] = (7, 8) // _v は ("A",2),(7,8,4)
ただし、途中の段が範囲指定のとき(_v[0, 1][0] = 9)は、取り出した範囲の配列を書き換えてから、展開して元の範囲へ差し戻す。
Tc602-6 までは、配列の中の配列に多次元代入すると、書き換えた内側の配列が外側の配列へ展開されて入れ子が崩れていた(上の _v[0][0] = "A" で _v が "A"、2、(3,4) の3要素になる)。途中の値が数値の場合も、作った配列が外側へ展開されていた。参照渡し(&_v[0][0])の書き戻しも同じ。
代入の根元¶
代入の根元は変数でなければならない。(式)[0] = 1 や func()[0] = 1 などはエラー E0029 になる。
参照渡し¶
フィードバック演算子(参照渡し)でも要素の要素を渡せる(Tc600-4以降)。func(&_h["sub"]["x"]) の中で _argv[0] を書き換えると _h["sub"]["x"] が変わる。Tc600-3 では手前の次元が無視され、_h["x"] に書き込まれていた。
文字列化と保存¶
入れ子の値を文字列にすると(TOSTR、文字列との連結、埋め込み、LOGGING など)、内側もそのまま , や = でつながれるので、どこまでが内側なのかわからなくなる。
_h = IHASH()
_h["l"] = (1, 2)
_h["m"] = IHASH("x", 1)
TOSTR(_h) // "l=1,2,m=x=1"
入れ子の形を保ったまま扱いたいときは次の方法を使う。
| 目的 | 方法 |
|---|---|
| 変数をファイルに保存して復元する | SAVEVAR / RESTOREVAR。入れ子は IARRAY{...} / IHASH{...} の形で保存される(保存形式) |
| 中身を確認する | DUMPVAR(Tc600-4以降)。入れ子は (array)[ ... ] / (hash){ ... } で表示される |
| 文字列にして受け渡す | DUMPJSON と PARSEJSON。ただし JSON で表せない区別(整数のキーと文字列のキー、VOID と空文字列など)は失われる |
制限¶
- キーが配列のハッシュは、
h[キー]の序数の第1要素がキーになるため、配列をキーにして引くことはできない(foreach や HASH_KEYS では取り出せる)。キーがハッシュならh[キー]で引ける